― 出会い、作品観、そして「説明しすぎない」映像制作の哲学

1. 出会いは2021年、幕張メッセの会場で
NANJO「皆さんこんにちは。NANJO Video Pro.のNANJOです。今日は、僕が心からリスペクトしている映像作家・Shumaさんに来ていただきました。」
Shuma「どうも、Shumaです。よろしくお願いします。」
NANJO「出会いは…2021年の冬、Inter BEEのブラックマジックブースでした。」
Shuma「そうそう。グレーディングのデモをやってた時だね。」
NANJO「客席で見ていた僕が終わった後にスーツ姿で声をかけたんです。『はじめまして、南條です!』って。」
Shuma「そのあと何度か現場に呼んだりして、岡山の奈義町でのショートフィルムが最初の本格的な仕事になったよね。」
2. 岡山・奈義町で感じた「地方の可能性」
NANJO「奈義町の現場、今でも覚えてます。市民の方がキャストで入っていて。」
Shuma「そう、『エンディングノート』というテーマで作ったショートフィルム。キャストはみんな地元の人だったけど、本当に演技がうまくて驚いた。プロじゃなくてもこんなに力を持ってる人がいるんだって。」
NANJO「地方には埋もれた才能がたくさんありますよね。」
Shuma「表に出てないだけでね。こういう人たちと一緒に作ると、その土地ならではのエネルギーが作品に乗るんだよ。」

3. 京都での暮らしと「移動する石」
NANJO「今は京都の築100年の町家に住んでるんですよね。」
Shuma「そう。もうすぐ1年になる。京都は物づくりに関わる人が多いから、何かやりたいと思った時に相談できる相手がすぐ見つかる。観光客も多いから、作品を見てもらえるチャンスも多い。」
NANJO「最近は『移動する石展』をやってますよね。」
Shuma「あれは完全に個人的な思いつき(笑)。7kgくらいの石を持ち歩くんだけど、始まりは“意味のないことがしたかった”っていう理由。」
NANJO「意味のないこと?」
Shuma「映像の仕事って、企画書を書いたり、撮影や編集の意図を説明したり、常に意味を求められるでしょ。それに疲れちゃって。意味がない行為を自分に課したかった。」
NANJO「それが石を持ち歩くことだった。」
Shuma「そう。しかも簡単じゃないほうがいいから重い石を選んだ。始めた当初は本当にしょうもない理由だったけど、やっているうちに人との出会いや展示に繋がっていった。」

4. JRとの仕事と「アートは世界を変える」
NANJO「最近一緒にやったのが、京都グラフィーで展示されたJRさんの作品のメイキングでしたね。」
Shuma「うん。京都駅前や新聞社跡地で大規模な撮影を8日間やった。JRは『アートは世界を変える』って信念を持っていて、本当に人が好きな人だった。」
NANJO「現場でのエネルギーがすごかった。撮影の合間に人と話し込んで、そこからまた新しいアイデアが生まれてましたよね。」
Shuma「あの姿勢は真似できないけど、本当にかっこよかった。」
5. 編集は「呼吸」――説明しすぎない映像作り
NANJO「Shumaさんの作品って、見ていて飽きないですよね。あれは意識してるんですか?」
Shuma「飽きやすい性格だから、自然と展開を変える構成になる。あとは“説明しすぎない”こと。映像を見ればわかるでしょ、っていう感覚。」
NANJO「言葉じゃなくて映像で伝える、と。」
Shuma「そう。説明を省くことで、見る人が自分で意味を作れる。だからこそ感情移入しやすくなるし、受け取り方も自由になる。」
NANJO「でもそのためには、画だけで伝わる構成力が必要ですよね。」
Shuma「そこは呼吸みたいなものかな。自分の間合いで編集している。説明できないけど、自然とそうなってる。」

6. 現場で学ぶことの価値
NANJO「映像を始めたばかりの頃、どんな作品を作ってました?」
Shuma「最初はブライダル映像。今見返すとひどい(笑)。でも先輩と同じ現場に入ったことで、一気にレベルが上がった。」
NANJO「現場で直接見て学ぶって大きいですよね。」
Shuma「そう。技術やノウハウは本だけじゃ身につかない。隣でどう撮ってるか、どうコミュニケーションしてるかを見ることで、“あ、こうやるのか”って腑に落ちる。」
7. 東京と地方、それぞれの強み
NANJO「東京と地方を経験して、どう感じます?」
Shuma「東京は人材の層が厚い。モデル、照明、ヘアメイク…全部プロが揃ってる。地方はそういう意味で制約があるけど、ロケーションの魅力やコミュニティの密さが強み。」
NANJO「岡山は助け合いの雰囲気がありますよね。」
Shuma「そう。必要な時にすぐ繋がれる。それは地方の大きな武器だと思う。」

8. 映像制作における「自由」と「責任」
NANJO「説明しすぎない映像作りって、制作者としては勇気がいりますよね。」
Shuma「そうだね。でも僕は、受け手が自由に解釈できる余白が大事だと思ってる。もちろん、その分だけ“責任”もある。中途半端な映像だとただ説明不足になるだけだから。」
NANJO「そのバランスを保つために、普段から意識していることは?」
Shuma「無駄を削ぎ落とすことかな。1カットごとに“これは本当に必要か”を考える。」
9. エンディング
NANJO「今日の話で、Shumaさんがなぜ独特な作品を作れるのか、少し見えてきた気がします。」
Shuma「またこういう機会があれば話しましょう。」
NANJO「ぜひ。ありがとうございました。」
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